住宅ローン減税の手続きはどうする?
税制改正後の変更点も確認
住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、要件を満たすことで税金が軽減される制度を「住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)制度」といいます。2021年末に住宅ローン減税の要件が見直しされ、2022年の税制改正で内容が大きく変わりました。
本記事では、2022年税制改正で変わった住宅ローン減税の変更点を詳しく解説していきます。
目次
- 住宅ローン減税を詳しく知ろう!
- 住宅ローン減税のための手続きとは?
住宅ローン減税を詳しく知ろう!
2022年度の税制改正により、住宅ローン減税は、控除率や控除期間について見直しが行われました。住宅ローンを利用してマイホームの新築や取得を行い、2022年以降に入居する方から、新しい制度が適用されます。
一般の住宅に関しては、借入限度額が減額されたものの「認定住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」などの環境にやさしい住宅の借入限度額は優遇されているのが特徴です。
住宅ローン減税は、毎年12月末日の住宅ローンの残高と住宅を取得した対価のいずれか少ない金額をもとに計算し、その金額が所得税から直接控除される税額控除のひとつです。本来納めるべき所得税の金額から直接差し引く(控除する)ことができることから「住宅ローン減税」や「住宅ローン控除」などと呼ばれています。
所得税そのものを軽減し、控除しきれない金額が残った場合は、金額の一部が住民税から控除できます。まずは、2022年度税制改正後の住宅ローン減税の主な変更点を確認しましょう。
- 適用期限を4年間延長
適用期限が2025年までに延長されました。 - 2022年以降に入居する場合の控除率が1%から0.7%に引き下げ
減税額は、「毎年末の住宅ローン残高×0.7%」の金額が所得税から控除されます。 - 控除期間は、新築住宅などの場合は原則13年、中古住宅は10年
これまでの控除期間は10年、新型コロナウイルス感染症の影響による特例の条件に該当すれば、13年の控除年数となっていました。しかし、2022年以降に入居する場合は、新築住宅などの場合は原則13年、中古住宅の取得や住宅の増改築は一律10年に変更されています。 - 所得要件が所得金額3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ
2022年度の税制改正で住宅ローン減税の対象者の所得要件は、合計所得金額2,000万円以下となりました。 - 住宅の環境性能に応じた借入限度額の上乗せ措置
4,000万円までだった借入限度額は、3,000万円に変更されました。ただし、2024年以降に入居する新築の一般住宅取得については、さらに2,000万円へ減額されます。この場合、2023年までに新築の建築確認を取得することが必要です。
2024年以降に新築の建築確認を取得した場合は、住宅ローン減税の対象にならないため注意しましょう。一方で「認定住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」などの環境にやさしい住宅は、種類によって借入限度額が上乗せされています。
また、中古の一般住宅の取得や住宅の増改築(リフォーム)の場合は一律2,000万円です。その他にも、以下のような細かい変更点があります。
- 2024年以降に建築確認を取得する新築住宅の省エネ基準適合の要件化
- 中古住宅の築年数要件の緩和
- 新築住宅の床面積要件40㎡以上への緩和措置など
よく内容を確認して、住宅ローン減税の申告漏れがないようにしましょう。
認定長期優良住宅などの住宅ローン減税も把握しよう
「認定長期優良住宅」「認定低酸素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」など環境に配慮した住宅の購入を検討する方向けに、一般住宅の住宅ローン減税と異なる点を紹介します。
住宅の種類を大きく分けると「認定住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」「一般の住宅」の4種類になります。「認定住宅」に該当するのは、「認定長期優良住宅」と「認定低酸素住宅」の2つです。
住宅の種類によって、住宅ローン減税の借入限度額が異なる点は、しっかりと押さえておきましょう。表で比較して見ると、以下の通りです。
住宅の種類 | 入居年 | 控除年数 | 借入限度額 |
---|---|---|---|
認定長期優良住宅 認定低酸素住宅 |
2022~2023年 | 13年 | 5,000万円 |
2024~2025年 | 4,500万円 | ||
ZEH水準省エネ住宅 | 2022~2023年 | 4,500万円 | |
2024~2025年 | 3,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 2022~2023年 | 4,000万円 | |
2024~2025年 | 3,000万円 | ||
一般の住宅 | 2022~2023年 | 13年 | 3,000万円 |
2024~2025年 | 10年 | ※2,000万円 | |
認定住宅等(中古住宅) | 2022~2023年 | 10年 | 3,000万円 |
2024~2025年 | |||
一般の住宅(中古住宅) | 2022~2023年 | 10年 | 2,000万円 |
2024~2025年 | |||
住宅の種類 | 入居年 | 控除年数 | 借入限度額 |
- ※ 2024~2025年に入居するものについては、2023年までに新築の建築確認が必要
控除率0.7%と所得要件2,000万円以下については、住宅の種類にかかわらず一律同じ要件です。認定住宅(認定長期優良住宅と認定低酸素住宅)、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅ともに、2023年までの控除年数は13年ですが、中古物件の控除年数はすべて10年に統一されています。
最も特徴的なのは、借入限度額です。住宅の種類によって借入限度額が異なり、また入居する年度によっても異なります。より環境に配慮した住宅ほど、住宅ローン減税の金額が大きくなるように変更されたことがわかります。
2023年までにマイホームを取得して入居した場合で最大減税金額を比較すると以下のようになります。
- 認定長期優良住宅:5,000万円×0.7%=最大35万円
- 一般の新築住宅:3,000万円×0.7%=最大21万円
- 一般の中古住宅:2,000万円×0.7%=最大14万円
認定長期優良住宅などの場合は、控除年数が13年となりますが、新築の一般住宅は2024年以降の入居は10年となり、中古住宅はすべて一律10年です。控除年数を最大限に活かせば、トータルの金額の違いは数百万円にもなります。
控除率が現行の1%から0.7%に減少するため、認定長期優良住宅についての控除額も今回の法改正によって減少となりますが、やはり住宅ローン減税のメリットは大きいといえるでしょう。
住宅ローン減税のための手続きとは?
住宅ローン減税は、住宅ローンを借り入れするだけで適用を受けられる制度ではありません。住宅ローンを利用してマイホームを購入(入居)した翌年には、必ず自分で手続きが必要です。ここでは、住宅ローン減税の手続きの内容と必要書類について確認していきましょう。
なお、2021年までに入居してすでに住宅ローン減税を受けている方は、控除率が1%から0.7%に変更される心配はありません。また、すでに住宅ローンの借り入れしている方が、借り換えをしても現在利用している住宅ローン減税の制度がそのまま継続されます。
金利の低い金融機関へ借り換えを検討している方でも、引き続き適用される条件を満たしていれば、借り換え後も住宅ローン減税を継続して受けることができるため、安心して借り換えを検討してみましょう。
入居した年の翌年の確定申告が必要!
住宅ローン減税を受けるための手続きは、入居した年の分と2年目以降の年の分で手続きの方法が異なります。住宅ローン減税を受ける初年度分は、住宅を取得して入居した翌年の2月16日~3月15日(該当日が休日の場合は翌営業日)までの間に確定申告をしなければなりません。
確定申告書に必要書類を添えて、住所地を管轄する税務署への提出が必要です。一般的に必要書類は、以下のようなものがあります。
【初年度分の住宅ローン減税の必要書類】
- 確定申告書(税務署で給与所得者はA表、その他の所得がある場合はB表を入手)
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(税務署)
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関から送付)
- 取得した住宅の登記事項証明書(法務局)
- 売買契約書の写し、建築請負契約書の写しなど
- 耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書の写し、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に関する付保証明書など(中古住宅の場合)
- 勤務先の源泉徴収票(給与所得がある場合)
- マイナンバーカード(通知カード)
- 入居時期に関する申告書兼証明書(新型コロナウイルス感染症の影響により入居が遅れた場合)
- ※ 認定住宅新築等特別税額控除を受ける場合には、「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に代えて「認定住宅新築等特別税額控除額の計算明細書」とそれらを証明する書類などが別途必要になります。
- ※ 源泉徴収票の提出は不要となりましたが、確定申告書を作成するときに必要です。
会社員・公務員であれば2年目以降は年末調整を
会社員や公務員といった給与所得者の場合、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きできるため、確定申告は不要です。一方で、自営業など年末調整の対象にならない方などは、続けて確定申告を行う必要があります。
【2年目以降分の住宅ローン減税の必要書類】
- 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書 兼 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(税務署から送付されたもの)
※自営業者などで年末調整の対象とならない方は、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(付表が必要な場合は付表を含む)」となります。 - 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関から送付)
まとめ
2022年度の税制改正によって住宅ローン減税の要件が見直しされ、控除率は1%から0.7%へ引き下げられます。しかし、認定長期優良住宅などの場合は13年もの期間住宅ローン減税を受けることができるため、減税のメリットは依然として大きいといえるでしょう。
住宅ローン減税を受ける初年度は確定申告が必要になるため、必要書類も多くて手間がかかります。しかし、必要書類を事前に準備しておけば、手続きは決して難しいものではありません。税金負担が軽減される制度のため、上手に活用して申告漏れがないように制度内容や手続き方法はしっかりと押さえておきましょう。
◆氏名
加治 直樹(かじ・なおき)
◆保有資格
1級FP技能士
社会保険労務士
◆プロフィール
銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務を経験。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。